思い描く性の幻想。
「濡れてるって受け入れますってことでしょう?
そりゃあ嬉しいよ」
深夜の電話で彼は語った。
わたしは曖昧に相づちしながら
「そうじゃないんだけどな」と心で悪態ついた。
曖昧に相づちしたのは
彼のその考えが幻想だと思う他ないからで。
というのもわたしは
「挿れたときに痛みに苦しまないために体が湿らしている」と考えがあったから。
実際濡れが甘いセックスは拷問かと思える。
皮膚が引っ張られたり裂けそうな感覚。
多少なら我慢する。耐えられる。
互いにさらけ出してるセックス下で言葉にまで思いやる配慮が出来ない。少なくともわたしは。
限界なら言う、言える間柄なのは幸いかもしれない。
話を戻すと
わたしにとっての湿りは潤滑油の意味しかもってなかった。
ローションを使っていない天然なぐらいにしか思っていない。
そこに濡れている=感じている、準備万端と思われるのは「男性の幻想」でしかないと思ってしまうのだ。
とはいえ男と女。
わたしがわからぬこともあるように
彼がわからぬこともあるのだ。
なにより自分自身でわかってはいない。
伝え合ってコミュニケーションするか、やめてしまうか。